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夏の夜に聴きたい曲(11) スロウ

グレイプバイン「スロウ」

 

 

これはライブ映像です。

グレイプバインは、さすがのライブバンド。

22年前のMVと見比べてみると、彼らの過ごしてきた時間の濃密さがよく分かります。

 

夏の夜に聴きたい曲というと、熱帯夜に更に暑苦しくなれる曲のイメージで。

重いツインギターがミドルテンポで絡み合いながら空間を埋めていくこの曲が、感覚としては最もふさわしいような。

 

真夏の蒸し暑い夜にラジオから流れたこの曲で、初めてバンドサウンドというものを意識した記憶があります。

謡曲とは違う、楽器が空間を作っていく音楽。

 

 

ボーカルの田中さんは元々ギター志望だったけれど、メンバーを募集したらギターが来てしまったという逸話の持ち主。

仕方なく始めたボーカルだったんですね。

だから彼は、隙あらばギターをかき鳴らし始めます。時にはリードギターを端に追いやるような演奏をし始めたり。

飄々としていて、ぐいぐい前に出てくるような感じではない。そんなギタリスト然としたボーカル。

この自然体な感じがあるから、彼らは22年も第一線で尖ったロックを鳴らし続けてこられたのかもしれません。

彼らの音楽には、慣れからくるマンネリとか、音楽への飽きとか、そういったものが全く感じられないのです。

22年経っても新しい道を進める凄さ。

 

 

彼らの歌詞は難解なので、すべてを理解することは出来ないのですが、

この歌詞にはある種の諦念みたいなものを感じます。

時間が経っていくこと、望まざる方向へ進んでいくこと、そういう世界のありかたへの諦念。

 

ただ、その中でも、

素晴らしき迷路に舞うメッセージ

見とれては消えた

という部分が、彼らのスピリットを端的に示しているような。

 

迷路みたいに何だかよく分からない時間、それを「素晴らしき」と形容してしまう力。

アーティストにとっては、多分、一歩先が見えないから美しい。

だからこそ、彼らは見えない世界、見えなくなってしまった過去、そんなものを作品にする。

迷路さえも楽しんでしまう。

それが彼らの強さなのかもしれません。