過ぎゆく季節を惜しむ曲(15)梟
Plastic Tree「梟」
彼らの長いキャリアの中で、3人で活動をしていたのは多分この曲をリリースした辺りだけ。
先代のドラムが脱退して、新しいメンバーを探していた時期でした。
この曲は、叶わなかった想いが物凄い情念に変化した、ある意味では柴田淳と同系統の昼ドラ的な心を歌った曲です。
夜にしか飛ばない、光を知らない鳥。そんな梟に、生きるための指針を失ってしまった自分の心を例えた歌詞。
私の中でこの曲は、脱退してしまった先代ドラムへのメッセージなんじゃないかと思っているんです。
叶わなかった恋愛を描くことで、失われてしまった繋がりを同時に惜しんでいる。
君とじゃない口づけをした。
横まで見ていた小さな月。
いちばん遠いもの、ただ、想う。
っていうのは、知らない人と音を合わせても思い通りにならないもどかしさだし、
恋焦がれ、不意に笑った。
ひとりよがり。壊れた船。
という部分も、壊れてしまったバンドという名前の入れ物を嘆いているようにしか見えない。
それほどまでに、バンドメンバーが脱退するのは大きなことだったのだな、と実感します。
私としては、現ドラマーの音がとても好きなので、収まるべき場所に収まったという気がするのですけれど。
それにしても、現ドラマーはこの頃まだサポートメンバーなので、MVでは一人だけめっちゃ遠くでぼやけているのが面白いです。
顔さえ判別できない。
彼らの曲を聴く時に最も印象深いのは、ボーカルの声だと思います。
めっちゃクセがあるけれど、慣れるととても味わい深い声。
一曲でもしっかり聴いてもらえれば、その良さは伝わると思うのですが…
ボーカルの影に隠れがちですけれど、シューゲイザーを基調とした轟音ギターロックも聴きどころです。
この曲は各楽器に見所があって素晴らしいです。
Cメロ終わりの泣き叫ぶようなギターソロも好きだし、
ドラムはBメロ終わりからサビ終わりまでのフレージングが本当にかっこいい。
ライブでは、聴きどころが多いし、単純に乗れる曲だし、人気の高い曲です。
彼らの曲を聴いたことがない方は、この曲から聞いてみると良いんじゃないかな。