【各種ソートへのリンク】

プラソートはこちら。(「十色定理」まで更新済)

People In The Boxソートはこちら。(「Tabula Rasa」まで更新済)





クリスマスの街を彩る曲(14) Hurry Xmas

L'arc-en-Ciel「Hurry Xmas

 

 

2007年発売の曲ですが、もはやクリスマスのスタンダードナンバーみたいな存在感がある曲。

クリスマスソングにありがちなベルの音は入っていませんが、音の作り方は疑いようもなくクリスマス。

 

邦楽で、ここまで明るいクリスマスソングって他に無いんですよね。

だいたい、しっとりとした曲か、もういない誰かを待つような暗めの曲かのどちらか。

暖かい気分にはなるけれど、明るい気分には中々なれないのです。

 

この曲は、マライア・キャリーの「All I Want For Christmas is You」に匹敵するような、光量の高いクリスマスソング。

ほとんどオンリーワンの輝きを放っています。

 

バンドサウンドに加えて、アコーディオンとか金管楽器、ストリングスなどが競い合うような演奏を見せており、

そのおもちゃ箱をひっくり返したような音像は、さながら賑やかで派手なクリスマスパーティのよう。

クリスマスといえばパーティなのに、そういう感覚のクリスマスソングってほとんど無いんですよね。

聴いていて楽しくなれる、クリスマスに大勢で騒ぐときに聞きたくなる曲No.1です。

 

それにしても、hydeさんの声と金管楽器の相性って素晴らしいです。

色の違うきらきら感がお互いを引き立てあって、物凄い輝きを放っています。

 

ちょっと初期ラルク感のある、ジャズっぽいパーティサウンドラルク好きに送られたクリスマスプレゼントみたいな曲でした。

クリスマスの街を彩る曲(13) エンドロールには早すぎる

スピッツ「エンドロールには早すぎる」

 

 

2020年12月13日のテレビ朝日「関ジャム」にて、『意外なアーティストのクリスマスソング』というのをやっていたので、それに少し乗っかってみます。

なので、今回の曲はクリスマスの街で流れるような曲ではありません。

隠れたクリスマスソング。

 

 

ラストクリスマスもそうだし、B'zの「いつかのメリークリスマス」もそう。何ならJ-POPでいちばん有名なクリスマスソングもですが、

日本で売れるクリスマスソングって、何故か寂しい曲が多い。

一緒に過ごす人が居る人はそもそも音楽なんて聴かないよ、ってことでしょうかね。

 

この曲も似た系列のクリスマスソングです。

映画でいうなら 最後の場面

終わりたくないよ スローにして

って、いきなり別れを目前にした場面からスタートします。

この曲は、別れを目前にしてようやく相手の存在の大切さが分かった、という曲。

 

イルミネーションがにじんでく

世界の果てはここにある

日本のクリスマスソングでは、イルミネーションは自分の外側にあるものとして描かれることが多いですよね。

華やかな街の賑やかさの中には入ることが出来ない。

 

明るい曲調に隠されていますが、

かなり切実な曲なんですよね。

スピッツにしては珍しくストレートな歌詞もそれに拍車をかける。客観的に自分を飾る余裕さえもないように見えるのです。

 

この80年代ディスコサウンドみたいな4つ打ちリズムは、敢えて踊り出せそうなサウンドにしたのかな。

まだ元通りになれることを諦めていないというか、それを疑っていないというか。

 

1Bの『こんな当たり前が大事だってことに』が、

3Bでは『あんな当たり前が大事だってことに』に変化している時点でだいたいお察しなのですけれど、最終的に、

君のくしゃみが聞きたいよ

意外なオチに賭けている

という可愛げな草野節で終わるところに、ちょっとした狂気を感じるような。

 

寂しいながらも、当然のように楽しい日々が戻ってくることを疑っていない。

それがこのディスコサウンドに表れているような。

 

スピッツにはたまにあるけれど、何か怖い曲。

 

この曲のイントロとアウトロの4小節目には、ちょっとしたベルみたいな音が入っていて。

それがひっそりとクリスマス感を演出しているのですけれど。

こんな怖い曲、クリスマスの街には流せないですよね。

クリスマスの街を彩る曲(12) いつかのメリークリスマス

B'z「いつかのメリークリスマス

 

 

昔はそこまで良さが分からなかったけれど、大人になるとそれが分かる曲ってありますよね。

B'zのイメージって、もっとギターがギャンギャン鳴って、稲葉さんがハイトーンで暴れまわっている、そんな感じだったのですけれど。

よくよく聴いてみると、こういう静かな曲のほうが彼らの良さを味わえます。

 

特に味わい深いのは、松本さんが弾くエレアコ

普段は歪ませまくりのギターを鳴らす彼が弾くアルペジオは、恐ろしいくらいに情感たっぷり。

寒い冬のバーで、一人でブランデーをあおるような。そんなやるせなさが伝わってくる音色。

暖かいけれど、空虚な音がするんですよね。寂しさの描き方が凄く巧い。

 

メロディーも含めて、この曲に通底しているのは寂しさとか無力感。

それをいちばん強烈に感じるのは、イントロの楽しげな音からのAメロ、『12月の…』の導入です。

クリスマスで浮かれた街から、寂しさを抱えた一人の人間へとフォーカスが合う。そんな映像的なスローダウン。

Bメロからサビへと、内面を吐露しながらも、この曲はずっと映像的なんですよね。

明るいとは言えない曲なのに、浮かぶ景色は全部暖かい。

それがこの曲をクリスマスソングたらしめている部分であり、かつ、何も持たない今の弱々しさを世界との対比で強調する部分です。

 

稲葉さんの歌詞と松本さんの曲、2人の力が奇跡的に共鳴した曲です。

考えてみれば、稲葉さんの歌詞も結構凄い。

こういう大人の香りがする曲に関しては、稲葉さんの作詞能力ってかなり高い気がします。

 

日本のクリスマスでいちばん流れまくる曲は何故か「ラストクリスマス」ですが、

同じような場面を描いた曲なのに受ける印象が全く違うのが凄い。

やはり別れの曲は真摯でなければ…

 

そういう意味では、

クリスマスソングとして世界で覇権をとってもおかしくない曲ではあるんですよね。

完成度が高すぎる。

 

それにしても、アウトロのギター。

高まる感情が伝わってきてとても良いのですけれど、演奏が完全にいつもの松本さんで面白い。

ある意味、少し安心しますね。

クリスマスの街を彩る曲(11) Can't Stop Fallin' in Love

globe「Can't Stop Fallin' in Love」

 

 

1990年代の冬を代表するCMといえば、広瀬香美を起用したアルペンと、時代そのものみたいなアーティストを起用するJR ski ski。

2010年代ではセカオワとかback numberが起用されていて、変わらないことの凄さを見せつけていました。セカオワのCMは好きだった。

90年代のJR ski skiといえば、同じglobeの「DEPERTURES」が有名ですが、私が好きなのは圧倒的にこっちでした。

 

どうしようもない不倫の曲。

不倫の曲というと、同時期のサザン「LOVE AFFAIR」が思い浮かびますが、あっちは夢の中にいる世界の輝きを描いた曲。

この曲は、明らかに未来がないことは分かっているし、一緒に居て幸せですらないのだけど、でも惹かれずにはいられない、ある意味で麻薬みたいな関係を描いたものです。

どちらも真実なのでしょう。

 

この暗い世界観がすごく好きです。

まさか小室哲哉がこんなにムードに溢れたエモーショナルな歌詞を書くとは。

たまに発生する、小室さんの本気を注ぎ込んだ歌詞です。

 

曲の中身も、とてもエモーショナル。

特に凄いのはドラムです。

このドラムが、背景にずーっと雪を降らせている。

ハイハットもスネアも、どこか雪を踏みしめる、もしくは降り積もるような冷たくて乾いた音で、目立つけれども背景を描くことに終始している。

音作りといい思想といい、完全にドラマーではなくシンセサイザー奏者のドラムなんですよね。

音のベースではなくて、世界の背景。

こういうことが出来るのも小室さんの凄さでした。

鈴とかハンドベルみたいな楽器じゃなくて、譜面で真冬を表現する力。

 

こんなに感情に溢れた曲には、やはりKeikoさんの声質がよく似合います。感情を絞り出すような声。

これが例えばtrfのYU-KIさんみたいな喜びに溢れた歌声だったり、安室奈美恵みたいな包容力のある声だと全然別物になるでしょう。

必要な楽曲を、必要な人に歌わせることが出来る。それもまた小室プロデュースの凄みですね。

 

暗さと寒さに覆われている、それもまた冬のひとつの姿。

楽しいことばかりではない、そんな関係もありますよね。そんなクリスマスソング。

 

クリスマスの街を彩る曲(10) 雪が降る町

ユニコーン「雪が降る町」

 

 

ユニコーン後期の名曲ですね。

奥田民生が段々とソロ活動に軸足を移し始めた頃の曲。

曲中では一度も「クリスマス」という言葉を使っていないのですけれど、これは明らかにクリスマスを描いた曲です。

クリスマスを描いてはいるけれど、別にクリスマスを歌った曲ではない。

その辺りの適当さが、とても奥田民生っぽいんですよね。

 

ちなみに、この曲には、ベルの音を足してクリスマス感を強めた「雪が降る町 "more bell mix」というバージョンもあります。

ちょっとしつこいくらいに鈴が鳴っていて面白い。世間一般のクリスマスソングに対するシニカルな視線を感じます。

 

 

だからキライだよ

こんな日に出かけるの

人がやたら歩いてて 用もないのに

年末近くの特定の日。

そして、

 

たまには二人で じゃま者なしで

少し話して のんびりして

二人で過ごす時間。

 

明らかにクリスマスデートなのに、乗り気ではないように見える人。

彼女に引っ張られて町に出かける様子がありありと浮かびます。

微笑ましい光景だし、そして、ナチュラルにモテる人。という感じ。

この辺りの自然体でも愛されるオーラが奥田民生の魅力じゃないかな。

 

見慣れた町に

白い雪が積もる積もる

ホワイトクリスマスなんていうムードある美しい日なのに、

ただ空を見上げて雪が降るのを眺めている。

イントロから分かるように、周りはクリスマス一色なのに。

中々こんなことは出来ませんよね。

他のことが気になりすぎて。

 

この外界に流されないナチュラルさ、

そしてフラットに世界を見据えてスケッチする力。

これは他には無い能力だと思うんですよね。

 

世間はクリスマス一色だけれど、

その外の世界は変わらずに美しい。

そんなことを感じる曲です。

 

 

そんなふうに、ほとんど奥田民生に目がいってしまうのですけれど、

地味にドラムも良い仕事をしています。

キーボードやギターは完全にクリスマスの町そのものですけれど、

ドラムのライドシンバルはずーっと4分で打たれていて、これだけが降り頻る雪を映像的に映し取っています。

これがあるから、雪が降る町の美しさが見えるんでしょうね。

地味だけれど楽曲の世界に誘ってくれる、良いドラムです。

 

クリスマスを外から見るからこそ、景色の美しさが映える。

そんな、視点の違うクリスマスソング。

こういうのも良いですね。

クリスマスの街を彩る曲(9) ストロボ

広瀬香美「ストロボ」

 

 

クリスマスというと、この人の曲は必ず出てきますよね。

在りし日のアルペンのCM曲。1993年から2002年まで、10年間ずっと広瀬香美だったんですよね。

冬になると毎年のように新曲が流れまくって、日本じゅうをほとんど一色に染めていました。

スキー場に行ってもずっと流れてたし。

「冬の女王」という名前は、今の世の中では追随する者が居ないくらいに凄かった。

 

90年代前半って、まだ世間の空気はバブル景気を引きずっていたんですよね。

そんな世間に広く聴かれていたこの人の曲も、やはり同様にバブリー。

ロマンスの神様」とか、こういう曲を歌う人って、令和のこの世の中では多分いない。だいぶ浮かれた曲でした。

そして、今聴いてみると、けっこうアレンジが弱い曲が多いんですよね。リズム楽器がだいぶぬるい。

弱いアレンジに強いメロディーと歌声。歌謡曲にしても、かなりバランスが悪いような。

確かに、広瀬香美ほどの歌声を持っていれば、それだけで音楽として成立するとは思うけれど。それにしたって、もう少し頑張れたような。

 

そんな中で、この「ストロボ」は、本間昭光さん(ポルノグラフィティ浜崎あゆみのプロデューサー)のアレンジが効いた、全体としてとても完成度の高い楽曲です。

というか、私の好きな広瀬香美の曲って、全て本間さんアレンジなんですよね。(「Promise」とか「DEAR…again」とか)

この二人の相性がすごく良いのです。

 

この曲は、それまでのイメージとは全く違う、完全な打ち込みアレンジ。

ほとんどシンセサイザーとドラム、そしてストリングスです。

何故かクリスマスソングによく出てくるストリングスとドラムの絡みが、ここでもまた使われていますね。

 

1998年って、小室哲哉の全盛期だったのですけれど。このアレンジって、すごく小室哲哉っぽい。

この、前にばんばん出てくるけれどボーカルを全く邪魔しないシンセサイザーとか。

途中で突然出てくる、一見どこで入ったか分からないオシャレ転調とか。

何故か裏拍で入ってくるハイハットとか。

エレクトロ歌謡曲ってことで、その第一人者を意識してリスペクトしながら作ったように感じます。

 

 

広瀬さんが小室ファミリーだったら、また歴史は変わっていただろうな…とか思ってみたり。

 

この曲で最も好きな部分は、Bメロとサビを繋ぐハイハット4連です。

サビのメロディーを強く立たせるタメであり、ドラムの聴かせどころであり。

こういう細かいところに曲の深みは宿るんですよね。

 

良いアレンジと良いメロディー。

その二つがないと、音楽はやっぱり完成しないよ。

クリスマスの街を彩る曲(8) All I Want For Christmas Is You

マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」

 

 

おそらく、世界のクリスマスポップソングの中で最も有名な曲です。

毎年、クリスマス時期には必ずどこかで聞くことになりますけれど、やはり何度聴いても良い曲であることに変わりはありません。

というより、これを聴かないとクリスマスの感じが出ないよね。

 

もはやクリスマスのスタンダードナンバーとなった感もありますが、リリースは1994年と、思ったよりも最近の曲でした。

例えば30年前にはこの曲が無かったわけです。その頃のクリスマスにはどんな曲が流れていたんでしょうね。

今となっては想像もつかない。

 

この曲の良さは、何よりも楽しい曲であること。

鈴や鉄琴、キーボードが、楽しげにジャンプするような音を出し、

飛び跳ねるようなメロディーと、幸せ感にあふれる歌詞。

そして何より、楽しそうに、気持ちよさそうに歌うマライア。

全てが暖かな空気に満ちているし、やっぱり、演者が楽しそうなのが一番良いです。

 

確かに、これくらい歌えたら楽しいだろうな。

 

 

この曲の邦題は、「恋人たちのクリスマス」。

何というか、すごく商業的なタイトルを付けたものですよね。

この曲の世界観って、あくまでも、

『世界にはあなたと私だけ』であって。

クリスマスデートで賑わう街みたいな、数万組のどこを取っても同じ、みたいな感覚の曲じゃないんですよね。

あまり、良いタイトルがすぐには思いつきませんが…

 

それにしても、邦題っていう概念が昭和っぽい感じですよね。

最近はあまり見ないような。

この曲に関して言えば、原題で覚えておいたほうが幸せになれると思います。