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クリスマスの街を彩る曲(12) いつかのメリークリスマス

B'z「いつかのメリークリスマス

 

 

昔はそこまで良さが分からなかったけれど、大人になるとそれが分かる曲ってありますよね。

B'zのイメージって、もっとギターがギャンギャン鳴って、稲葉さんがハイトーンで暴れまわっている、そんな感じだったのですけれど。

よくよく聴いてみると、こういう静かな曲のほうが彼らの良さを味わえます。

 

特に味わい深いのは、松本さんが弾くエレアコ

普段は歪ませまくりのギターを鳴らす彼が弾くアルペジオは、恐ろしいくらいに情感たっぷり。

寒い冬のバーで、一人でブランデーをあおるような。そんなやるせなさが伝わってくる音色。

暖かいけれど、空虚な音がするんですよね。寂しさの描き方が凄く巧い。

 

メロディーも含めて、この曲に通底しているのは寂しさとか無力感。

それをいちばん強烈に感じるのは、イントロの楽しげな音からのAメロ、『12月の…』の導入です。

クリスマスで浮かれた街から、寂しさを抱えた一人の人間へとフォーカスが合う。そんな映像的なスローダウン。

Bメロからサビへと、内面を吐露しながらも、この曲はずっと映像的なんですよね。

明るいとは言えない曲なのに、浮かぶ景色は全部暖かい。

それがこの曲をクリスマスソングたらしめている部分であり、かつ、何も持たない今の弱々しさを世界との対比で強調する部分です。

 

稲葉さんの歌詞と松本さんの曲、2人の力が奇跡的に共鳴した曲です。

考えてみれば、稲葉さんの歌詞も結構凄い。

こういう大人の香りがする曲に関しては、稲葉さんの作詞能力ってかなり高い気がします。

 

日本のクリスマスでいちばん流れまくる曲は何故か「ラストクリスマス」ですが、

同じような場面を描いた曲なのに受ける印象が全く違うのが凄い。

やはり別れの曲は真摯でなければ…

 

そういう意味では、

クリスマスソングとして世界で覇権をとってもおかしくない曲ではあるんですよね。

完成度が高すぎる。

 

それにしても、アウトロのギター。

高まる感情が伝わってきてとても良いのですけれど、演奏が完全にいつもの松本さんで面白い。

ある意味、少し安心しますね。