クリスマスの街を彩る曲(9) ストロボ
広瀬香美「ストロボ」
クリスマスというと、この人の曲は必ず出てきますよね。
在りし日のアルペンのCM曲。1993年から2002年まで、10年間ずっと広瀬香美だったんですよね。
冬になると毎年のように新曲が流れまくって、日本じゅうをほとんど一色に染めていました。
スキー場に行ってもずっと流れてたし。
「冬の女王」という名前は、今の世の中では追随する者が居ないくらいに凄かった。
90年代前半って、まだ世間の空気はバブル景気を引きずっていたんですよね。
そんな世間に広く聴かれていたこの人の曲も、やはり同様にバブリー。
「ロマンスの神様」とか、こういう曲を歌う人って、令和のこの世の中では多分いない。だいぶ浮かれた曲でした。
そして、今聴いてみると、けっこうアレンジが弱い曲が多いんですよね。リズム楽器がだいぶぬるい。
弱いアレンジに強いメロディーと歌声。歌謡曲にしても、かなりバランスが悪いような。
確かに、広瀬香美ほどの歌声を持っていれば、それだけで音楽として成立するとは思うけれど。それにしたって、もう少し頑張れたような。
そんな中で、この「ストロボ」は、本間昭光さん(ポルノグラフィティや浜崎あゆみのプロデューサー)のアレンジが効いた、全体としてとても完成度の高い楽曲です。
というか、私の好きな広瀬香美の曲って、全て本間さんアレンジなんですよね。(「Promise」とか「DEAR…again」とか)
この二人の相性がすごく良いのです。
この曲は、それまでのイメージとは全く違う、完全な打ち込みアレンジ。
ほとんどシンセサイザーとドラム、そしてストリングスです。
何故かクリスマスソングによく出てくるストリングスとドラムの絡みが、ここでもまた使われていますね。
1998年って、小室哲哉の全盛期だったのですけれど。このアレンジって、すごく小室哲哉っぽい。
この、前にばんばん出てくるけれどボーカルを全く邪魔しないシンセサイザーとか。
途中で突然出てくる、一見どこで入ったか分からないオシャレ転調とか。
何故か裏拍で入ってくるハイハットとか。
エレクトロ歌謡曲ってことで、その第一人者を意識してリスペクトしながら作ったように感じます。
広瀬さんが小室ファミリーだったら、また歴史は変わっていただろうな…とか思ってみたり。
この曲で最も好きな部分は、Bメロとサビを繋ぐハイハット4連です。
サビのメロディーを強く立たせるタメであり、ドラムの聴かせどころであり。
こういう細かいところに曲の深みは宿るんですよね。
良いアレンジと良いメロディー。
その二つがないと、音楽はやっぱり完成しないよ。