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雨の日に聴きたい曲(8) 春と修羅

きのこ帝国「春と修羅

 

 

轟音と女性ボーカルの曲、その1。

凄まじい曲です。こういう歌詞の曲を歌える人がどれくらいいるだろう。

 

音楽はその人の内面を映す鏡。

それがボーカルであれドラムであれ、命を傾けて鳴らしている以上、言葉よりも雄弁にその人を語る。

のだけれど。

 

やっぱり、作品として出す以上、ある程度は飾ろうと思うはずなのだ。

汚い内面なんて見せたくないし、

そういう美しくないものが人に受け入れられる、商品価値があるとは思わないし。

だけどこの曲は、そんなこと全然考えてない。

ただ、自分の叫びを音楽というフォーマットで叩きつけているだけ。

 

そんなことをするミュージシャンは他にほとんど居ないから、

なんかぜんぶめんどくせえ

この叫びが異常な説得力を持っている。

自分以外の何かに配慮する、邪魔される、心配される、そういうのが、

ぜんぶめんどくせえ。

 

佐藤千亜妃は、そういう作品を作ることが出来る稀有なミュージシャン。

それは音楽的な才能とか、そういうことじゃなくて、

音楽に掛ける魂の総量みたいなものだと思っています。

彼女は音楽で出来ている。

 

 

 

とは言うものの。

この頃のように苦しそうな曲ばかり歌う佐藤さんよりも、メジャー移籍後の佐藤さんのほうがずっと好きなんですよね。

憑き物が落ちたというか。

インディーズ当時は他者から身を守るために大声で叫んでいる作品が多かったのだけど、

メジャーでは他者も受け入れて、周りを含めて自分の世界として歌っている。

 

二人の行為に意味なんてないから

かなしいと思った

(中略)

もう少しのあいだ

さとらないでくれよ

 ーー「平行世界」

 

という世界から、

 

ハッカのせいにしたつもりだけど

きみはわかっていたのでしょう

絡んだ髪の毛をほどいて

ごめんね、って目を伏せた

 ーー「ハッカ」

 

似たような場面を描いているけれど、

一人から二人へ。

彼女はこのアルバムから急激に、「あなた」を歌うようになる。

 

春と修羅」から数年後、メジャーで出した最初のアルバムのセカンドリード曲がこの曲であるのも、何かの決意なのかもしれませんね。

 

 

誰かを拒むための鎧など

重たいだけだから捨てましょう

 

 

 

 

ここからは本当に余談なのですが、

春と修羅」というと、downyの曲も思い浮かびますね。

湿度がとても高くて、台風を家の中から眺めているような。

むしろこっちのほうが雨の日に聴きたい曲なのですけれど。

明確に雨が降っているわけではないので、めっちゃ好きなのですが今回は割愛です。

また、台風の曲を紹介することがあれば。