秋の夜長を彩る曲(3) 今夜はブギー・バック
TOKYO No.1 SOUL SET + HALCALI「今夜はブギー・バック」
今まで数多くのアーティストにカバーされてきた「今夜はブギー・バック」ですが、
その中でも一番のクオリティです。何なら本家に匹敵すると言っても過言ではありません。
オリジナルからだいぶ遠く離れてしまったエレクトロサウンドですが、アレンジをなぞっただけのカバーよりもずっとオリジナルへのリスペクトを感じます。
この曲はアップテンポに再構成されているのですが、オリジナルの空気感がほとんど損なわれずに残っています。
やはり、いちばん大きいのはHALCALIの気怠いボーカルでしょうか。
オザケンとスチャダラパーが作り上げたムーディーな世界が新宿の夜だとするならば、
HALCALIが有り余るエネルギーと気怠さで作り上げたのは渋谷の真夜中。
ムーディーな深い格好良さは確かに失われているけれど、その分だけ、煌びやかな夜の輝きは強くなっています。
楽しそうだよね、という印象。
多分、本人たちがこの瞬間を一番楽しんでいる。
自分の言葉で再構築すること。
それが、もしかするとカバー曲に最も重要な要素なのかもしれません。
オリジナルそのままの言葉で表現しても、それはただの朗読劇だよね。
あと、やっぱり、どうしたって神様から与えられた力っていうのはあるわけで。
神様がくれた
甘い甘いミルク&ハニー
の説得力は圧倒的にHALCALIの方が上です。
何が凄いって、甘い甘いミルク&ハニーをもらって、それをただ浪費するに任せている感じ。
人が羨むその贈り物を、一瞥もせずにただ当たり前のものとして使いつづける。
それを輝きというのかもしれません。
作品と表現者が奇跡的に化学反応を起こした時、作品のポテンシャルは一気に増大する。
このカバーはそういう曲なのかもしれません。