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秋の夜長を彩る曲(5) ムーンライト----

Plastic Tree「ムーンライト----」

 

 

 

タイトルは全角ダッシュ4個です。

公式のPVが既に間違っていて、とても微妙な気分になりますけれど。

 

この曲のAメロの譜割りは物凄いです。高速でひたすらmid2Eの連打。あとはそこからふわふわと上下するくらい。

呟くような歌い方で、もはやラップと言っても良いくらい。

似たような歌い方はこの時期の彼らの曲に時々あるのですが、この曲はかなり特徴的。

 

Bメロになると、上がっては下がりのまるで螺旋みたいなメロディー。

Aメロ→Bメロで、過去に囚われた感情の動きが説得力を持って描かれています。立ち止まってみたり、前を向いては過去を振り返ったり。

 

サビに入ると、急激に視界が開けます。

空を見上げて、月に胸の奥まで照らされる感覚。

 

だけど、別に自分とか世界が何か大きく変わるわけでもないんですよね。

同じ月 同じこと 胸の奥を照らされたら

あと1秒 1光秒 戻るほどに遠い

ただ記憶との距離を再認識するだけ。

 

見える景色は美しいけれど、特に何かが良くなったわけではない。

これは後ろ向きに見えて、ある意味、救いでもある。

世界が美しくても、周りが素晴らしくても、自分が同じように善くなければならない、なんてことはない。

だから無理して強くなくてもいいじゃん。

 

差し込む月の光の美しさも相まって、

何かしら賛美歌的な神々しささえ感じます。

 

 

 

ライブバージョンではもっと特徴的なのですが、この曲はドラムのための曲です。

ドラムフレーズがあまりにも印象的。

 

例えばサビ前。

後ろ向きな1サビではハイハットクローズ1打だけ、

段々感情が昂ってきた2サビではスネア連打、

忘れゆくことを自覚して怖がる3サビでは無音。

サビへの入り方だけでも、その感情に引き寄せられるんですよね。

 

この曲におけるドラムって、いわば体温。

Aメロでは手数が多い、細かいドラム。

Bメロでは余白が多く、月光が差し込みはじめるような透き通ったハイハット

サビでは心臓の鼓動みたいな、単純な強打の8ビート。

 

このドラムパターンによって、この世界の中に物理的に引き込まれる感覚があります。

まるで同じ体温を共有しているような。

歌詞は世界を記述するけれど、歌詞は世界の全てではありません。こんな描き方も美しいよね。

 

 

このブログには、Plastic Treeの好きな曲ランキングを作る「プラソート」を置いているのですが、この曲は全体の1位。

めっちゃ好きな曲です。

彼らには夜とか月がよく似合います。