秋の夜長を彩る曲(13) VALON
Salyuのデビューシングル「VALON-1」のバージョン違いです。
そちらも好きですが、より秋の夜にふさわしいのはIlmariとのデュエットバージョンです。
デビュー当時のSalyuは本当に神がかっています。力強いのに透明な声。
そしてやっぱり、歌唱力が凄い。
Ilmariのラップは、RIP SLYMEではもっさりしていてあんまり…でしたが、
この曲の中で、彼の後ろ乗りのリズムはある種の色気を醸し出しています。これが全体に夜のムードを出す、良い味付けになっています。
全然違うキャラクターの声。
この二人を混ぜようなんて普通は思わないけれど、この曲では不思議なほどに絡み合い、溶け合っています。
きらきらした光を思わせるSalyuの声と、夜を思わせるIlmariの声。この両者が世界にくっきりとした陰影を浮かび上げているよう。
この頃は無かった概念であるチルとエモが混ざり合いながらマーブル模様を描いていて、その明滅に息を飲みます。
確かにこれは、Ilmariじゃないと出来ない世界。
「VALON-1」もそうですが。
この曲は、本当に小林武史のセピア色にサイケデリックな世界観が凄まじい圧力をもって眼前に迫ってきます。
それは二人の強力な歌い手の力によるものではあるのですが、やはり小林武史のソングライティング能力の凄さを感じずにはいられません。
彼の最高傑作はこの曲なんじゃないかな。