夏の夜に聴きたい曲(18) 黒いブーツ
SOPHIA「黒いブーツ」
過去の記憶と自分を重ね合わせたとき、
自分は本当に成長したと胸を張って言えるのか。
成長したのではなくて、ただ世界に流されただけなのではないか。
そんなことを考える曲です。
過去に付き合っていた、モラトリアムの象徴みたいな友人。
その人間性を描くことで、逆説的に自分の弱さを見つめるんですよね。
お前は最後までぶれなかった、じゃあ自分は?
この曲の演奏は、最初から最後まで何もテクニカルなことをしていない。
コードも、CFCFG→CFCFGって、黒鍵を使わずに弾けるメジャーコードだけで出来ているし。
音色は底抜けに明るい。
過去のことを思い出すにしても、小学生くらいの単純さで話をしている感じ。
ここで描かれている「お前」は、純粋性の象徴だったんでしょうね。
それを失ったことは、イコール汚い大人の世界へ足を踏み入れることだった。
oh my friend お前は捜してた
人混みで 暗がりで 走り出せる為だけのBOOTS
盗んだバイクで走り出すような感じ。
人混みで走り出した先に、自由はあるかもしれない。
でも社会は無い。
暗がりはどこまで行っても暗がり。
大人になった今となっては、そんなこと分かるけれど。
でも、お前はどこかに行けたのだろうか?
聞こえてくるのはそんな叫び。
この曲の間奏部分は明らかにベートーベンの第九を意識していて、
その部分の歌詞はこんな感じ。
『喜びよ、そして美しい霊感よ
死後の楽園にいる娘よ
私たちは陶酔し、足を踏み入れる
天にいるあなたの聖域へ』
「黒いブーツ」に出てくる友人は既に亡くなっているのですが、
第九のこの歌詞を読むと、
どれだけその存在が大きかったか、
どれだけ今の自分を嫌いなのか、
それがよく分かる気がします。
生きることは、理想とは程遠い。