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過ぎゆく季節を惜しむ曲(14) 変身

柴田淳「変身」

 

 

これはライブDVDの映像ですが、

柴田さんのアカペラを聞くことが出来るMVも素晴らしいです。

原曲とは違う、作品が描くぽっかりした穴を表現した素晴らしい映像。

 

どちらも原曲と違うアレンジなので、サブスクが使える人はぜひ原曲を聴いてみてほしいです。

淡々としたギターの音に乗って歌も淡々と流れていくのですが、

そこから微かに漏れ出す隠しきれない感情に心を掴まれます。

 

過去、テレビのバラエティ番組で「日本一暗い歌手」という素晴らしい称号をもらった柴田さんの実力を垣間見ることの出来る曲です。

別れた相手のことを忘れられずに、埋められない穴を自覚しながら生きるという曲。

 

君が育てていた花に水をやる

君が消えないように

ずっと消えないように…

 

こういう描写も柴田さんの特徴です。

少し大袈裟で、ある意味昼ドラっぽいところはあるけれど、でも分かる。

傍らにあった存在が消えてしまった後に残った、小さな欠片。その繋がりを僅かでも消したくないから、全身全霊をかけて残そうとする。

だからこそ、次に進むことが出来なくなってしまうのだけど。意識もエネルギーも過去にしか向かないから。

 

そんな救いようのない世界観だけど、メロディーは本当に美しい。

透明で、きらきらと光を反射する水晶みたい。

でも、だからこそ、そこには止まってしまった世界を外から眺めるような物悲しさがあるんですよね。

時間を止められた剥製だったり、形を保ったまま琥珀の中に閉じ込められた存在のような。

 

この曲に感じるのは美しい空虚。

世界は美しいけれど、そこに中身は無い。

それは時間を失った記憶であり、

何よりも大切な存在を失ってしまった後に残された世界であり。

 

そんな透明な世界を表現することのできる柴田さんの作詞・作曲能力、

そして何よりも歌声の美しさ。

そこに物凄い力を感じる曲です。